DMS③ 必要な範囲を覚える

「ニー ハオ マ」「ニー シー チョングーレン?」

それは、2015年12月ロンドンの中心駅のひとつパディントン駅近くのゲストハウスでのことでした。相部屋の宿泊客の中に中国人か韓国人かひょっとしたら日本人という雰囲気の男性がいました。私は直観的に中国人だろうと思って「こんにちは」「あなたは中国人ですか?」と、中国語で挨拶をしました。

すると彼は少し驚いた表情で振り向くと、中国語で話し始めました。

私は「自分は日本人」「(中国語は)分からない」と中国語と英語で言ったのですが、彼は中国語を続けようとしました。

欧米人以外の人が欧米の国々にいる場合は、その人はたいてい英会話をすることができます。とはいえ、簡単にアイスブレイク(緊張感を取り除く)のに、その人の国の言葉で話しかけることはとても効果的です。

2015年の旅の別のエピソードです。

イギリスの地方の街からロンドンに向かう経路にストーンヘンジという有名な遺跡があり、その最寄り駅のソールズベリーで下車しました。駅からは、遺跡近くの集落(街)まで定期運行のバスを利用するつもりでしたが、バスターミナルが駅にはありませんでした。ツーリスト・インフォーメーションの窓口に並んでいると、私の後ろにいたイギリス人の女性が日本語で声を掛けてきました。「こんにちは」「あなたは日本から来ましたか?」と。私が持っていた手荷物には日本航空のタグが付いていたので、すぐに日本人と察しがついたのでしょう。彼女は日本語を習得したものの、使うチャンスが無くて、私に会えたことがうれしかったようでした。事情を英語で説明すると、彼女はタクシーの運転手と話をしてくると言ってタクシー乗り場に行って、運転手と相談してくれました。

タクシーの運転手はその女性が乗るものと思っていたようで、私だけが乗ると知って少し残念そうな顔をしました。彼ははじめのうちはしゃべりたがらなかったのですが、トルコ系ということで、私が辛うじて覚えていた「アラスマラデュック」「ギュレギュレ」というトルコ語の挨拶の言葉を口にした瞬間から、上機嫌になって「日本のどこから来たんだ」「トーキョー」「オーサカ」・・・知っている地名をいくつか上げました。上機嫌なのはタクシーを降りるところまで続き、最後はメーターを止めた後に、ホテルまであとちょっと(200mほど)をサービス(無料)で運転してくれました。

挨拶の言葉を知っているだけでコミュニケーションはとても楽しいものになります。挨拶だけなら、何か国語でも、覚えようと思えば覚えられます。

それと同じように考えて、現実的に必要な範囲(薬局やどこ? トイレはどこ?)を念頭に学習するだけなら、英語の学習もそれほど負担にはならないでしょう。

大学受験で高度な英語能力が求められるのは、明治以来(その前からも)外国の学問・知識の習得を重視してきたからです。近代社会の原型を作ったのは英仏独といった欧州の代表的な国々です。どの学科であれ、その原則・原点について学ぼうと思えば、歴史的に価値のある論文を原文で読むことになるのですから、高度な英語能力が必要になります。その意味で、大学受験英語は学問を修める上で必要な範囲の英語なのだと思います。

随分前に本に書かれていたことですが、明治時代にイギリスに留学した夏目漱石は寡黙な人だったそうです。口数が少ないので、かえってそれが信頼のおける人物という評価になったとか。そこから振り返って、現代社会と比較してみると、人口比で考えれば明治時代に夏目漱石程度に英語が出来た人の割合と、現代の割合はそれほど変わりないか、現代の方が少ないとも書いてあったように記憶しています。

自明のことながら、英語で話す相手は、大半は英語が自分よりもよくできる人です。あまり恰好をつけずに、素直に話せば通じると思います。

場合によっては、思い切って「Could you speak Japanese?」と笑顔で聞いてみるのも良いでしょう。(ソールズベリーで出会った女性は「自分の日本語にくらべたら、あなたの英語はとても上手です」と何度か言っていました。)

Study by self

英語学習、独学で英語スキルを高めるためのメモ

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